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 この少女は一体何を見ている

    リアは大岩建設本社ビルから二十メートルほど離れたビルの屋上に着地した。振り返ると、特邏隊の突撃部隊が入り口の辺りに集まっているのが見えた。幸い飛び移るところは見られていなかったようだ。ちょうどそのタイミングで、再び電話が震えた。美岬からだ。「飛び移ったよ。特邏隊(あいつら)には気付かれなかったみたい」『そう、とりあえず一安心ね。私はその隣のビルまで迎えに来ているわ。こっちまで来て頂戴』「えっ、どこ?」    リアは周囲を見回し、近くのビルの屋上を探した。すると、確かに三十メートルほど離れたビルの屋上で、美岬が手を振っているのが見えた。「ああ、おっけー。今行くよ」    そう言って電話を切り、リアはもう一度ビルとビルの間を跳躍した。美岬の隣に着地し、ほっと一息つく。ようやく緊張の糸が解けたリアは、いつもの調子で軽口を叩く。「あー、今日はちょっと危なかったね。まぁ毎日が順調ってわけじゃないし、目的が失敗したわけでもないし、たまにはそんな日も……」「言いたい事はそれで全部かしら?」    言いさした言い訳を途中で遮り、美岬は鋭い視線を向けた。リアは口を噤み、まるで母親に叱られる子供のように肩を縮こまらせて、黙り俯く。エアジョーダン激安
『……どうやら、また例の病気が始まったみたいね。いいわ、言い訳は後で聞くから、とりあえずそこから早く逃げなさい。そのビルから北東の方角に、少し低いビルがあるわ。貴女なら飛び移れるでしょ? さぁ、早く!』「わ、わかった」    そこで電話は乱暴に切られた。リアは電話を降ろし、少しだけ振り返って、ポッカリと空いた穴を見た。その底に転がっているバラバラになったティフィーユを思い、目を伏せる。「……………………」    死体だらけの部屋に。バラバラになった人形の部屋があって。そこは全部全部、血塗れに彩られていて――それではまるで、地獄と一緒じゃないか。「……知らない。CAは機械よ。あれは機械なんだってば……」    最後にそう呟き、リアは強い横殴りの風の中を駆けて手すりを蹴り、高く跳んだ。ふわりと軽い山なりの軌道は重力の制御を振り切るかのよう。眼下に落ちていく雨粒が街の光に下から照らされ、風に煽られて不規則に揺れる。真っ暗な夜空にはためくコートが水分を吸い、ばさばさと重く打ち鳴った。その中を赤い光とサイレンが通り過ぎていく。ディーゼル バッグ
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    音がする方向の手すりまで駆け寄り、街全体を眺める。このビルに到着するまで、もう幾らもないだろう。「どっちに、逃げるべき……?」    リアは焦り、思案する。今から一階まで降りている間に特邏隊は到着するだろう。ティフィーユとの戦闘で、銃弾は予備まで使い切った。このまま正面から特邏隊とやり合うとしたら銃を使わず戦う事になる。そうなったら手加減などできない。逃げ遂せるためには、突撃部隊を皆殺しにしてしまうしかない。「どうしよう……どうしよう……」    リアは迷った。    完全無欠、無敵にして最強、この街を駆けるダークヒーロー・躍る漆黒(ブラック・バレエ)は――その実、ただ一人の少女でしかない。    躍る漆黒などという仰々しいその名が語るほど、リアは強くも弱くもなかった。どんな相手であれ、どんな状況であれ、必ず目標を達し、邪魔者を排除する事はできる。だが、無作為に街を荒らし回ったり、人々を殺す事ができるわけではない。実際、特邏隊の隊員など上位組織の政府軍に比べれば遥かに格下で、隊員の経験によってはそこらの傭兵より練度が低い事さえある。リアの戦闘能力を総動員すれば、政府軍であっても軽くあしらえる。特邏隊など組織ごと殲滅してやる事くらい造作もない。gucci 財布
「貴女が――仮想生命体《ノー・アライブ・ブレイン》であると言う事がバレてしまうわ」    リアはその言葉を、俯いたまま黙って飲み込んだ。 仮想生命体――リアが人間であって人間ではない存在でありながら、強引に人間たらしめている、神の領域を犯した超技術。様々な桁外れに常識外の技術や論理、法則を盛り込み、魔法とさえ言われる、禁断と禁忌を犯し続けた極地の果てに辿り着いたカースが遺した最後の技術。不可視装置(ステルスユニット)をいとも簡単に見破り、TAやCAですら遠く及ばない戦闘能力を生み、ビルとビルの間を軽々と跳躍するような現実離れした行動を可能とさせる、その技術の正体。それはカースが発見した、あらゆる物質を“電素”と呼ばれる新たな元素へと還元し、対象の構成情報を完全に記録してしまう技術である。 電素はあらゆる存在の根源を司る原子以下の最小単位だ。金属やプラスチックなどの無機物は言うに及ばず、生物などの有機物、火炎や電気と言った不定形の現象まで、液体や気体などの態にも囚われず、物事の状態にも関係なく、全ての事象・物体を構成する。このような性質を持つ為、電素は当然電気信号などにも互換できるので、演算機能を持つもので操作・記録する事が可能である。 故に人間に対してこの法則を駆使し、電素に分解する事ができれば、コンピューター等で再構築する事も可能となる。構築の過程で数値を変えるだけで運動能力の向上や身体の成長、言語能力から計算能力、その他諸々の全ての能力を爆発的に引き上げられるのだ。それどころか元の状態を保存したデータさえあれば、損傷した部分を再構築する事によって傷病を修復し、死すら簡単に回避する事も可能となる。しかしこの技術の真価は、そんなものには留まらない。本来の目的からすればむしろ、それらの超常的な効果でさえ、単なる副産物にしか過ぎない。 “神の領域を犯した”などと大仰な比喩をされる所以は、ありとあらゆる事象と現象を記録可能な上で、そこから発生する事も(・・・・・・・・・・)、発展していく事も(・・・・・・・・)、元の対象物と同様の(・・・・・・・・・)法則に従う事ができて(・・・・・・・・・・)しまう(・・・)という驚異的な事実があるからだ。つまりは、ある人格を宿した肉体を、即ち脳を記録すると、その人間の記憶や感情や性格でさえ――俗に言う“魂”と呼ばれる部分さえ、電子データに置き換えて記録できてしまう。即ち、電素に還元したところからもう一度再構成して生まれてくるのは、ただ全く同一の人物と言うだけでなく、完璧な同じ人間を(・・・・・・・・)、完全に違う存在として(・・・・・・・・・・)作り変えた人間(・・・・・・・)という事である。    しかし、電素の観測は非常に難しく、通常の理論や法則、技術などでは認知すらできない。そもそも、電素を扱うだけの処理能力を持つコンピューターさえ存在しない。仮に演算が可能になったとしても、それを保存するだけの容量を持つ記録媒体も存在しない。人間一人を完全に電素へ還元する為には、細胞一つ一つ全ての構成情報を記録し、恒久的に維持する必要がある。そんな神のような作業を可能とするコンピューターなどあるはずもない。つまり電素の存在を知るだけでは、何の応用もできない。    だが、カースは技術を完成させた。常識から外れ、世界から外れ、あらゆる通念を覆し続けた希代のマッドサイエンティストは、電素を正しく観測し、電気信号の情報として捉え、記録も演算も管理も可能とするコンピュータ――“救済者(セイヴァーズ)”を完成させた。救済者はデータ管理・保存用の“Noah(ノア)”、演算用の“Ark(アーク)”、入力・出力用の“Testament(テスタメント)”の三機から成る複合型コンピュータである。    この街の人間達――とりわけ企業の人間達が何より恐れるのは、略奪と破壊、そして自らの命の喪失である。こうしたものを脅かす存在は、時にして金の力であったり、火器の力であったりと様々である。形を変え、手段を変え、どこからでも現れ続ける、あらゆる敵意。そうしたものと、この街の人間は常に戦わなければならない。    破壊が絶対の意味と力を持つこの街において、何者にも脅かされず、何者にも勝利できうる力を持ち、あらゆる手段に対してどんな無茶な手でも打てる仮想生命体は、まさにこの街の人々が追い求めて止まない、奇跡にも等しい力(コンピュータ)だ。    ただ“奇跡”と呼ばれるが故に、この技術はどこまで行っても“奇跡”でしかなかった。    この技術の存在は今のところ、技術者達の間だけで実しやかに囁かれる噂話程度のものであり、世間的には全く知られていない、あるいは信じられていない技術である。今のところこの技術を行使しているのは世界でたった一人、リアだけだ。そういう意味で言えば、リアはこの街どころか世界そのものを引っくり返しかねない恐ろしく強大な力を、その身一つで独占していると言う事になる。    こんな事実がもし公然と世間に広まれば、今まで以上にリアへの警戒が跳ね上がるのは無論の事、仮想生命体の技術を狙った者達からの攻撃は避けられず、敵対する相手は加速度的に増えるだろう。    リアはそんな事実を知ってか知らずか、ばつが悪そうな顔をしたまま、半ば自棄気味に嘯いた。「……そんなの、何とでもなるよ。みんなみんな、ぶっ壊しちゃえばいい。全部全部、ぶっ殺しちゃえばいい」    開き直ったリアの態度に、美岬はついに激怒した。「何を言っているの!? 貴女は何もわかっていない! 貴女が思うほど世界は小さくないし、弱くもない! いい? 貴女は彼らからしてみれば、脅威の塊なの。畏怖の塊なの。言ってしまえば、バケモノと変わらないのよ!?」    美岬は今まで募らせてきたリアの危機意識の低さに対する危惧を捲くし立てた。これを自覚しないリアを見て、今まで何度肝を冷やしただろうか。問題はリア自身の事ではなく、この街がリアの存在をどうあっても許そうとも認めようともしない事だ。だからリアはもっとこの街を“危険なモノ”だと認識して、警戒しなければならないと言うのに。    今のリアは、あまりにも危険過ぎる。無論、その強大な力の事ではない。この街の“リアに対する敵性”という狂気じみた現象そのものがまるでわかっていない。これまでも異常に強すぎるリアに対して、街の目は冷たかった。だが、これからはもうそんな次元の話ではない。この街は確実に、リアに対して明確な殺意を向けてくる。あらゆる敵意や悪意が加速し、何千何万という人間達がリアを目指し、駆け上ってくるだろう。美岬は自分が思いつく、最悪のストーリーを怒鳴り散らした。「バケモノだと思われた貴女が、この街でのうのうと野放しにされると思う? 今まではただの異常な強さの、よく経歴のわからない、辛うじて“人間の”扱いだったわ。でもこれからは、明確に“異種”として認識される。貴女は確実に排除される。貴女は今夜、この街の全てに対して、宣戦布告をしたのと同じなのよ!」    全てを叫び尽して、息を切らせながら美岬は黙った。    この先、イリアル=フレイルが “人間”として見られる事は、もう二度と無いだろう。その意味を、この少女はどう捉えているのだろうか。    リアは微かに震えていた。そして次の瞬間、美岬は耳を疑った。「ふ、ふふ、うふふふ……」    リアの震えが、次第に大きくなってゆく。反射的に美岬は一歩後退った。「笑って……いるの……?」    美岬は引き攣った表情で問うた。そこがリアの限界だったようだ。「あはっ! あはははははは! あはははははははははははははははははははははは!」    場にそぐわない絶倒。今の話を聞いて、何故笑う?「何……何を笑っているの? 貴女、何を考えて……!?」    美岬は狼狽えた。少女から流れ込んでくる、思考の思い切り外側からの、理解不能な感情のアプローチ。    絶倒。この絶倒が言外に何を孕んでいるのか、まるで理解できない。改めて認識したリアの異常性、それに対しての恐怖。どうしようもない無力感が美岬を襲った。    この少女は一体何を考えている? この少女は一体何を見ている? 何一つ理解できない。わからない。どうしようもない。    ようやく笑いを抑えたリアが、取り残された美岬に飄々と言い放った。「いい言葉だね、さっきの。心に刻んでおくよ。今夜、この街の全てに対して、宣戦布告をしたのと同じ、かぁ……」    まだ理解不能な笑いの余韻に浸りながら、リアはさっきの言葉を繰り返した。思考中枢が少しだけ元に戻った美岬は、一言だけ何とか言い返す。「どういうつもり、リア……!」    しかしすっと表情の消えたリアは問いかけに答える事なく、突然独り言のように語りだした。「ねぇ、あたし、昔はすっごく病弱だったんだ。知ってる?」「それがどうし……」「あたし、あの日(・・・)までに何度も何度も、しょっちゅう風邪を引いて寝込んでた。本当に病弱で、お姉ちゃんがいないと本っ当に、なぁーんにもできない子だったんだ」    リアはまるで美岬の存在を無視したかのように、ぽつりぽつりと語る。今は何を言っても通じそうにない。ようやく我を取り戻した美岬は恐る恐る、その話に聞き入る。    闇夜の雨雲を見上げながら、リアは段々と表情を寂しいものに変えていった。声色も普段の突き放すような冷たいものではなく、見た目相応の少女の声に変わっている。「あたしの周りには、いつも知らない人間しかいなかったんだ。ただ一人だけ、お姉ちゃんを除いてはね」    漠然と語るリアの言わんとする事がわからない。真意を図りかね、首を傾げる美岬に、リアは寂しい笑顔を向けた。「あたしが言いたい事はね、美岬。世界はいつだって小さいし、あたしの味方じゃないの。仮想生命体(こんなの)になる前からずーっとね。この街の全てに対して宣戦布告をしたのと同じって言ったけど、ちょっと違うからあたしが訂正してあげる」    そこでリアは少し息を飲み込み、寂しさに満ちた微笑みで吐き出すように言った。「あたしにとって元々、この街の全てが敵だったんだよ。何の因果でそんな所に生まれたのか知らないけど、ね」    それだけが唯一、少女の辿り着いた真実(こたえ)。生まれ育った境遇。今まで過ごしてきた時間。そして、今ここに在る現実。果てない苦難の日々の終着で見つけたのはただ、それら全てがいつでも少女に刃を向けていたのだという、あまりにも救いがなくどうしようもない無情だけ。そんな世界を受け入れろと言う方に無理がある。だが……。「……それでも、それでも貴女に勝ち目なんて無いわ。それで全てに仇為して、一体何になるというの? 数も、大きさも、とても貴女一人だけじゃ敵わない……」    美岬は居た堪れない気持ちで、悔しそうに言った。    たった一人の少女が立ち向かうには、あまりに大きくて非情な存在達。全てが仇為すから、少女は全てに対して銃を向け、引き金(トリガー)を引く。もうそれしか、手段は残されていないと言うのか――。    しかし、リアはにっこりと微笑んで、真っ直ぐに美岬を指差した。「だから、あんたと“契約”したんでしょ?」    一直線の笑顔に美崎は思わずたじろぎ、それ以上は何も言えなくなった。    まだまだ悪意の連鎖は終わらない。まだまだ敵意の刃は並んでいる。その悪を以って国一つを押し潰し、飲み込んだ街――グロウリアスが向ける悪意は、この程度ではない。それこそ、永遠に続いていく。    そんな街に圧殺されそうで、それでも戦い続ける事を義務付けられてしまった少女の無垢な笑顔は重く、切なかった。その笑顔に、つい忘れていた“契約”の重さを思い出させられ、美岬は胸にずんと石が落ちたような感覚に見舞われた。そんな美岬に構わず、リアは眼下の特邏隊をどこか遠い目で見下ろした。「街中のヤツらがあたしを殺しに来るって? 上等だよ。それならそれで、その全員にぶち込んでやるから。ああ、それとも……」    リアは口早に、絞り出すような小さな声で呟いた。「それとも……この悪夢を、誰かがそろそろ終わりにしてくれるの?」「リア……」    美岬はその背中を悲しい目で見ながら、独り言ちた。「……この街の人間って言うのはどうしてこうも、どうしようもないものを背負い込んでしまうのかしらね」    悪夢の前聖日(ダーク・オブ・ノエル)がもたらしたのは、単なる国家の破壊だけには終わらなかった。この街に住まう全ての人々から、大切なものを根こそぎ奪っていった。それは、少女にしてみれば姉で、彼女にしてみれば兄だった。しかし、それは決して珍しい事ではない。等しく、この街全ての住民に与えられた試練であり、傷であり、闘争だ。家族を、恋人を、友達を――それらが当然のようにあった時代は、とうの昔に終わってしまったのだから。    それでも、二人は戦うと決めた。取り戻すと決めた。二人ぼっちの宣戦布告は誰にも届く事はなく、しかし確かな鏑矢となってその戦火の始まりを鳴り響かせて、鬱屈した街の空を切り裂いていくだろう。そして世界は再び流れ出すのだ。十年という時間をかけて溜め込んだ闇を吐き出し、今一度、破壊の夜を忘却させんが為に。 リアはもう何も言わない。雨の烟る街を、ただぼんやりと見つめている。 美岬も何も言わず、ただ、リアのか細く小さな右手をそっと握り締めた。http://www.airjordan.comparereplica.com「私、いつも言ってるわよね? 作戦中は絶対に、どんな時でも気を抜かないでって。今日はどうしてこんなひどい事になったのかしら?」    作戦時間の予定超過。それに伴う連絡もなく、あまつさえ特邏隊までもを呼び寄せてしまった。いくらなんでも、これはあまりにお粗末過ぎる。それを推して謝るでもなく軽口を叩いたリアに、美崎は激怒していた。決して激しくはないがその静かな威圧に気付かぬ訳はなく、リアはしょんぼりと肩を落とし、目を泳がせながら言い訳を始める。「え、えっと、その……。あの、新型のCAが突然割り込んできて、それで……」「それで?」「……えっと、うんと」「失敗はなかった、と言ったけれど、そのCAはどうしたの? ちゃんと破壊してきたんでしょうね?」「う、うん、その……」    リアは口籠る。何も言えず、しかし美崎の鋭い視線に貫かれ、蚊の鳴くような声を上げた。「してない……」「どうして?」「……そういう、気分だったから」「仕事をナメるのも、いい加減にしなさい!」    美岬は強く叱咤し、リアの胸倉を掴んで引き寄せた。リアは身体を強ばらせ、ぎゅっと目を瞑る。エアジョーダン 通販「私達はね、遊んでいるんじゃないのよ! 貴女が毎回、どういう腹づもりで任務に赴いているのか知らないけど、命を張る状況で冗談とそうじゃない事を見分けられないほどバカなら、二度と戦場に立たないで!」「うるさいっ!」    後味の悪い戦いからやっとの所で逃げ帰り、挙句厳しく叱られたリアの精神が従順でいられたのは、そこまでが限界だった。胸倉に掛けられた手を力任せに振り払い、涙ぐんだ目で美岬を睨みつける。「あんたに何がわかんのよ!? あたしが今日、どういう思いで戦ってたか、あんたにわかるの!?」「全然知らないわ、そんな事」    美岬は逆上するリアに対して、どこまでも努めて冷静に振舞った。瞳に怒りの炎を湛え、激昂を満載した言葉を、それでも理知的に説き聞かせるように喋った。「私は確かに、安全な場所から貴女を眺める事しかできないわ。前線に立つ事には、そりゃあ沢山辛い事もあるのだろうと思う。私には理解できないような、前線に立たなきゃわからないような事が、沢山ね。でも、その話は遠い昔に終わらせたはずでしょ? 貴女は、それを飲んでそこに立っているはずよ。なのにそれを言い訳にするのは、契約違反(・・・・)だわ」gucci バック
    美崎の鋭い正論に、リアは押し黙るしかなかった。    前衛のリア、後衛の美崎。それは互いの短所と長所を組み合わせ、一体となってこの街と対峙する為に必要な連携だ。もしそれが崩れてしまえば、たった二人分しかない力で事を成すのは何一つとして不可能である。二人が組んだ時に交わした契約は、その事を固く約していた。しかしそれは暗に弱点を握り合ったと言うより、信用に足る人間があまりにも少ないこの街において唯一と言っていい“盟友”としての信頼関係の代替だった。つまるところ、契約によって縛り合う関係なのではなく、本当の意味で結託し、支え合うという事だ。    美崎は荒いだ声を収め、優しい声で諭すように語りかける。「その事で悩むな、とは言ってないし、割り切れ、とも言ってないわ。どれだけ悩んでもいいし、無理に割り切る必要もない。泣き言をどれだけでも言えばいいし、私でよければどれだけでも付き合うわ。私は貴女に、人間をやめろとは(・・・・・・・・)一言も言っていない(・・・・・・・・・)。私は可能な限り貴女と言う存在を尊重しているつもりだし、何か不服があるのなら改善するわ。でもね、それとこれとは話が別だと言っているの。私が言いたいのは、しっかり仕事をしろと言う事なのよ」ナイキ ジョーダン
「……わかってるよ。わかってるよ、そんなの……」「なら再確認をした上で、もう一度訊くわ」    美岬はリアに歩み寄り、厳しい視線と口調で問い質した。「何故、そのCAを破壊しなかったの? 貴女、これが契約違反に当たる(・・・・・・・・)って事くらい、わかっているんでしょ?」    リアは観念したように、呟くような重い声で答えた。「CAだけど、人間に見えたの。あたし……泣いてる女の子を殺す事なんてできない。綺麗事だってわかってるけど……でも、できなかったの」「……話にならないわね。貴女は本当に、お姉さんを取り(・・・・・・・)戻す気があるの(・・・・・・・)?」「――――っ!」    リアはその言葉に、息を詰まらせた。美岬と交わした契約。そして、リアが戦い続ける理由の全て。    それは、行方不明になったリアの姉を探し出し、取り戻すと言う事。そして美岬がリアと共に戦うのも、ある日突然姿を消した美岬の兄を探し出し、取り戻す為だ。    お互いに失った最後の肉親を探し出す為、二人は契約を交わした。美岬は様々な仕事を引き受けてリアに斡旋し、その過程で情報を探す。リアはそれを請け負って、戦う。お互いが探す相手が見つかるまで、この契約は続く。グッチ 財布 レディース
    だが、できない。リアが持つ唯一の欠点にして弱点。それは本当に対峙した相手か、目標として定めた相手としか戦えない事だった。何の因果関係もない彼らに、このまま対峙する事など自殺行為にも等しい。    その時、懐の携帯電話が震えた。不意を突かれたリアは驚き、慌てて通話に応じる。「も、もしもし」『何をモタモタしているの! 今どこにいるの!?』    着信は美岬からだった。その声を聞いた途端、リアの心に安堵が広がり、緊張が一気に解かれた。思わず、涙が溢れそうになる。「み、美岬ぃ……」『情けない声を上げるんじゃないわ。どこにいるのかって訊いているのよ』「えっと、まだ大岩建設のビルの屋上……」『なんですって!? 貴女、今そこに特邏隊が向かっているのよ! 状況をわかっているんでしょうね!?』    美岬は怒っている。当然だ。予定の時間をとっくに過ぎており、経過連絡もないのだから、その怒りは尤もである。しかし電話越しの激しい叱責に、リアは答えられない。ただ、憔悴しきった様子で、荒い息遣いだけがノイズに渡って通話口に低く鳴る。    美崎は短く嘆息し、そこでようやくリアの状態を理解した。エアジョーダン1
    契約は不可侵であり、お互いが絶対に守らなければならない。馴れ合いや情けなどで蔑ろにしてはならない。お互いがお互いの為に全力で全てを懸け、常に最善を尽くしていく。そうでなければたった二人でこの悪意の街を相手にする事など、愚にもつかぬ妄言となってしまう。「今日の貴女の失敗はとても大きな痛手だわ。特邏隊のCAに記録が残ってしまった。独立した媒体に残されてしまった記録はハッキングじゃ消せないし、よりにもよって特邏隊じゃ……お金の力も効きづらいわね。つまり、こっちの手の内を連中に渡してしまったと言う事よ。遠からず、情報はこの街全体に漏れ出すと思うわ。そうなったら最後(おわり)よ。貴女はもう、人間じゃ(・・・・)いられなくなる(・・・・・・・)」    政府は元より、企業達が今、何より探し求めている情報。それは、謎に包まれたリアの正体だ。    CAの記録ともなれば、顔はもちろんの事、戦闘の詳細な解析データなども全て残っているだろう。それらの情報と、これまでのリアが起こしてきた数々の事件における戦闘データを照らし合わせてしまえば、今では都市伝説となった稀代のマッドサイエンティスト――カース=マスべリューが死の直前に遺したとある技術の存在が浮上してしまう。美岬は言葉を切り、深く息を吸って、重々しく言い聞かせる。エアジョーダン激安
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