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作者:
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時間:
2014-6-30 18:37
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第37話 貫禄
水の流れる音がしていた。色づいたもみじの葉がひらりと舞い、庭園を横切る小川のせせらぎに乗っては消えていく。
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少年の記憶を消す。その任務のため、少女は標的を捜す。「……」 誰もいないのだろうか。屋敷は静まり返っていた。ガラス戸ひとつなく、どこもかしこも簾や木戸で戸締まりがしてある。その分、人影の有無は確認し易かった。ひとつ、またひとつと部屋を移動する。5つ目の部屋に差し掛かったところで、中から凛とした琴の音が響いた。それは弦一本分だけ鳴った後、再びその震動を止めた。
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ルナは庭園に誰もいないことを確認し、少年の行き先を追った。相手は今頃混乱しているはずだ。そう考えたルナは、特に警戒することもなく、堂々と縁側を渡って行く。美しい庭の風景にも、もはや関心はなくなっていた。
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半ば奇襲めいた登場の仕方だが、ルナはあくまでも冷静だった。左手を背中に回し、相手に見えない位置で指を折り曲げる。時間を稼がなければ。それだけが課題だった。
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http://www.stiwebcast.com 少女は怯まなかった。簾の奥を覗き込むと、色艶やかな着物の裾が見えた。そしてその色を覆うように、長々とした黒い髪が流れていた。ルナは首を傾げる。あの少年ではない。まさかこの短時間で女装したというわけでもあるまいと、ルナは人物の同一性を否定した。シャネル ピアス 誰だろうか。少年の記憶に現れたということは、大事な人に違いない。肉親か、あるいは恋人か、それとも何か因縁めいた女性か……。ルナは簾に手をかけようと指を伸ばす。
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「覗きが趣味とは、少々いただけませんね」 ルナは簾から手を放し、縁側から飛び降りた。見ればあの少年が、怒気を漂わせた表情で隣の部屋から姿を現していた。いつの間に。さっき確認したとき、隣の部屋は無人だったはずだ。それとも、屏風の後ろにでも隠れていたのだろうか。しかも少年は、烏帽子(えぼうし)に白少装束という、ひどく奇妙な出で立ちをしていた。さきほどまで来ていた簡素な私服は、あとかたもなく消えてしまっている。
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縁側の廊下に立ったルナは、周囲を伺うようにその鋭い視線を走らせていた。ここはどこだろうか。少年の記憶に飛び込んだはいいものの、辿り着いた場所と時系列の見当がつかないのだ。京都か奈良の古跡かとも思ったが、どこか風景がおかしい。塀の向こう側には、近代的な建物はおろか電信柱ひとつありはしなかった。車の走行音もなく、空気も異様に澄んでいる。
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